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広島・福岡「三空港体制」への疑問

2009/01/28 18:33

 

2012年度に軍民共用空港として開港を目指す岩国空港(現・岩国飛行場/海自・米海兵隊岩国基地) に、ANAが羽田線を就航させる意向を表明した。山口県における民間空港としては、山口宇部空港(現在羽田線などが就航)に次ぐ2つ目となるが、これは実質「広島における3つ目の空港」と言える。岩国市は事実上「広島都市圏」に含まれるからだ。

 

岩国市は山口県の東端に位置しており、広島市と隣接している。広島市西部の航空利用者にとっては、新空港は広島空港(三原市)より距離的に近く、アクセスが優れることが強みとなるだろう。一方で、広島市内に位置し広島都心に最も近い広島西飛行場については、広島市が羽田線の復活を求めている。現在の広島空港はこれら両空港、とりわけ西飛行場に比べてアクセスが悪く、3弱空港同士が足の引っ張り合いを始めることは目に見えている。

 

広島に続く悪い事例になりそうなのが福岡だ。現在の福岡空港(板付)は博多駅からわずか1駅と都心から非常に近いことが空港の強みとなっているが、拡張が難しく需要に対応できないという理由から移転が検討されている。尤も国交省は難しくても拡張をする方向だが、地元は経済界を中心とした協議会が新宮町沖への建設を提案し、造る前から苛烈な競合状態になっている。「新福岡空港」自体の問題点は既にある程度議論されているのでこの場では述べないが、都市圏全体にとって問題なのは将来福岡県内に3空港が併存する状態がありうることだ。

 

現在、福岡県内には板付の福岡空港と開港3年目の北九州空港の2つが存在する。仮に両空港が存続したまま新福岡空港なるものが出来れば、福岡もはれて関西、広島に続く3弱空港体制に仲間入りすることになるだろう。新福岡空港を建設する場合に板付をどう扱うかは地元でも議論が分かれるようだが、広島の経緯を見れば存続する可能性の方が高い。ここで求められるベストアンサーは「新福岡空港など造らない」ということに尽きる。

 

3弱空港体制の大先輩である大阪では、アジアのハブ空港を目指すはずだった関西国際空港が大失速の憂き目にあっている。昨年は「関空いじめ」とさえ言われた大手2社による関空発着路線大リストラが行われたが、今年出揃った新しい路線・便数計画ではロンドン線や中国線の一部が休止され、国内線も鹿児島線などが集中的に減便される。これはもはやいじめの域を超えた「関空はずし」であり、空港として存続すべき価値を将来に渡って維持できる状況ではない。この責任は一義的に、伊丹空港のあり方を見直そうとしない兵庫県にあると言える。

 

「おらが町に空港を」という地域エゴはかえって地域全体の地盤沈下を招く。新年度の大手2社の路線・便数計画は関西空港に厳しいが、それ以上に神戸空港は仙台線、鹿児島線を失うことでデスティネーションが7から5に減るという異常事態に陥る。先行事例として、首都圏では美濃部都政時代に羽田の空港機能縮小を謳い、成田新空港の建設でもめている間に埋立技術が飛躍的に進歩した。このことで2つめの空港を造った意味はなくなってしまい、羽田空港の沖合展開事業(沖展)が始まっている。今後も羽田空港の機能拡張は検討されるだろうが、成田空港が当初計画どおり全面完成の日を迎えるのはいつのことになるやら知れない。これらの教訓はまず兵庫県が伊丹空港の廃止を真剣に検討すべきだということを示しているのではないか。

 

広島の話に戻せば、県の藤田雄山知事は「西飛行場不要論」を唱えている。新広島空港は既に造ってしまったものなので仕方がないが、とすれば西飛行場は廃止するほか選択肢はない。県、市をあげて新広島空港へのアクセスの改善を図るべきで、関西の轍を踏むことがないよう期待したい。全国的に見ても、今後道州制の導入を見据えれば、1都市3空港体制は首都圏以外では検討の余地はない。

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派遣労働者が「階級闘争」を挑むべき相手

2009/01/26 18:10

 

前のエントリに関連して「階級闘争的スローガンを叫ぶ労働者たちをどう思うか」という問いを受けた。

 

例の「派遣村」の村長である湯浅誠氏をはじめ、あの手の運動家と彼らに扇動された労働者たちは経営者を相手に階級闘争を挑んでいるように見えなくもない。経団連のパーティに押しかけて抗議文を渡そうとしたり「昼間から酒を飲むな」などと意味の分からない癇癪を起こしているのもそうした背景からだろう(経営者としてひと言言わせてもらえば、昼間から脂ぎった顔の年寄りたちと好き好んで酒を飲むはずがないことくらい理解してほしい。経営者同士嫌々酒を酌み交わすことで何人の労働者の雇用が守られているか知れない)。

 

だが私に言わせれば、階級闘争は大いに結構としてもそれを挑む相手が違う。社会主義革命やその流れのなかで常にクローズアップされてきた"階級闘争"は、資本家と労働者の対立(という構図)だった。だが、今の日本の経営者は資本家ではない。彼らは「資本」を持っているわけではないし、突き詰めれば「資本家に雇われたサラリーマン経営者」でしかない。創業家出身の社長誕生が話題になったトヨタ自動車も、豊田家の持ち株比率は2%にも満たない。「トヨタの豊田社長」でさえも"一番偉いサラリーマン"でしかないのだ。

 

では巨万の富を貪り労働者を苦しめる資本家は、と問われるだろうがそんな者もいない。証券市場の発達と投資機会の増加、グローバリゼーションにより上場する大企業の株は誰でも買えるようになった。株主は分散し、大企業であればあるほど特定の存在(「資本家」と呼称される者)が企業を所有し、支配することは難しくなったのだ。尤も、トヨタ自動車の株主52万人全員を総体的に捉えれば彼らは資本家かもしれない。だが、その52万人の中には「資本家」とは程遠い中産階級のサラリーマンやデイトレードに熱をあげていたフリーターも含まれている。中産階級やそれ以下の人々を相手に実態のない「階級闘争」を繰り広げているとすれば愚かな労働者の何と悲しきことかな、という感じがする。

 

彼らが本来階級闘争を挑むべき相手は、前エントリでも指摘したノン・ワーキングリッチである。パソコンも英語もろくにできない中年・高齢層が能力的にははるかに優れ、生産性の高い若者から不当に所得を奪っているのだ。この低成長・ゼロ成長時代に高度成長を前提とした終身雇用制、年功序列賃金の残滓を引きずりその恩恵を享受し続けているノン・ワーキングリッチこそ、労働者が闘うべき相手ではないか。

 

賃金の世代間格差は90年代以降徐々に狭まってきている。だが、まだ不当な格差がないわけではない。高度成長の折には年を重ねるうちに回収できた所得も、この調子では今の若い世代は回収できない。それどころか巨額の財政赤字や改革を怠ったせいで残った非効率な産業構造を背負っていかなければならないのだ。若い世代が得るべき所得を確かに獲得し、子孫の世代まで普通に飯の食える日本を残すためには、まずは「同一労働・同一賃金」「能力主義・実績主義第一の賃金体系」の獲得が必要である。これらに正面から取り組んでいく「階級闘争」なら、広く社会的支持を得られるはずだがどうだろうか。真っ赤なアジ文を振りかざしているだけでは進歩がない。

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日本は一度ダメになるべきなのか

2009/01/26 03:52

 

 

山形県知事選で改革派現職が「温かい県政」を掲げる新人に 追い落とされたという話が、今の日本の実情をよく現していると思う。民主党は「郵政選挙で『改革を止めるな』という流れを作った結果、格差が拡大した。現職・斉藤県政はそれと同じ」という論法で与党を批判し、それが選挙結果に作用したという見立てが有力だ。

 

経済学的にはもう論じつくされていることなので今更ではあるが、世帯所得格差の拡大は①高齢化の進展と核家族化でほぼ説明できる点に加え、②長期不況のなか高度成長を前提とした終身雇用制度を引きずり続けたことが理由として挙げられる。これを裏付ける数値として①格差拡大の傾向は90年代から始まっているうえ、②01年~06年の小泉政権下の改革で格差はむしろ縮まった(03~06年)ことがOECD調査で明らかになっている。

 

経済が分からないジャーナリストや評論家がよく「格差拡大を止めるために終身雇用制に戻せ」という意見を述べるが、これも格差が少なかったころ偶々終身雇用制度が主流だったというだけの因果関係で物事を捉えた貧しい発想だ。日本の終身雇用制度とそれを支える年功序列の賃金は、直近で労働需要の充足や生産性の向上に貢献する若い世代に対して配分が少ない代わりに、直近で労働力としての貢献度が低い高齢の世代に手厚い配分がなされる仕組みだ。結果、賃金曲線(図参照)は30代半ばを境目に右肩上がりに上昇する。

 

尤も、年功賃金の合理性を説明するひとつの説として「熟練仮説」を挙げ、生産性の向上も伴っていると主張する向きもあるだろう。だが実態は異なるうえ、そもそも年功賃金の合理性を主張する根拠として熟練仮説は十分ではない(今野(2002))。しかも、企業の従業員の年齢構成はますます高齢化するため労務コストは膨張し続ける。結果、働かないのにしっかり稼ぐノン・ワーキングリッチと働いているのに稼げないワーキング・プアという図式が生まれるのである。

 

一般的には、自称「労働者の味方」である野党はじめ、テレビ、一般紙などマスメディアでもワーキング・プアばかりにスポットライトを当てている。そこではノン・ワーキングリッチという対比的存在が明らかにされないため、経済学的に誤った「構造改革=格差拡大の元凶説」が流布されるわけだ。結果、割を食うのは経済学の知識どころか仕事上のスキルも欠けた派遣労働者などの非正規社員であるわけだが、彼らは身近に自らを苦しめる最大の敵(ノン・ワーキングリッチの存在をもみ消す野党やマスメディア)がいることにいつまで経っても気づかない。「仕組みを作った人間が得をする」とはどこかの成功者の格言だが、今度の派遣法改正も組織範囲を正社員に限定した労組と、それに煽られついでに国民の歓心まで買ってしまう野党が「勝ち組」、労働者は最後まで騙され続けて野垂れ死ぬ「負け組」という図式が見透かせる。

 

そうして与野党が入れ替わり、政権交代が実現した暁には日本は相当酷いことになるだろう。尤も、民主党が3分の2を確保しない限りまた1年ほどで解散総選挙がやってくるし、政界再々編が終わるまで政局は安定しない。よって、酷い政策もフルスピードで実現されることはないだろう。だが、問題の本質を見ないピントはずれの議論を続けているうちにこの国が不況から脱出できるということはあり得ない。産業構造の革新(構造改革)小さな政府・成長路線シフト(つまり多くの人々が小泉=竹中路線として忌避しているもの)が正しいということは経済学的には当然のことだが、それを国民が理解するためには一度経済的にどん底に落とされ、塗炭の苦しみを味わうしかないのだろう。そら見たことか、と言われ恥を忍んで「改革派」に助けを求める頃まで日本が"もっている"かどうか分からないが。

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航空業界は雇用を維持

2009/01/24 01:35

 

航空大手2社の来年度の採用計画では、雇用維持の姿勢が鮮明となっている。ANAは総合職の新規採用を4割減らすものの、契約社員の採用数は維持。JALは総合職も前年並みの新規採用を維持し、契約社員も同じく対応する。加えて、JALはlay-offしない方向で雇用維持努力を続けている。昨年末から全社員を対象に一時休職者(期間1ヶ月)を募集しているが、人員削減は行わない方針のようだ。

 

航空業界の雇用形態は霞ヶ関の中央官庁のそれと似ている。霞ヶ関で言うキャリアが総合職に相当し、実際役員にまで出世するのはほぼ総合職に限られる。ノンキャリアは空港や機内で働く地上職、CA(客室乗務員)の若手に相当するが、こちらは多くが契約社員として雇用されている。CAの場合は入社から数年の間は契約社員として雇用され、引き続き勤続する者が正社員となる仕組みだ。ちなみに、国内航空初のCA出身女性役員はANAの山内純子執行役員(現・取締役執行役員)だが、これに続く人間はまだいない。

 

これが製造業であれば、派遣社員が「派遣切り」にあっているのと同じように契約社員も真っ先に人員削減の対象になりうる。ところが、航空業界ではそうはならない。これは、製造業の場合契約社員や派遣社員が多く働く製造ラインの稼動が実需にほぼ連動しているのに対し、航空では雇用(と稼動)と実需の間にバッファーがあるためだ。例えば、今年IATAが言うように旅客収入が7%減るからと言って、保有する飛行機を7%減らすことはそう簡単にはできない。空港のカウンターに立つ人間もCAも、乗客数に応じて細々と人数を調整できるわけではない(1機に乗るCAの人数は使用する機体の非常口の数に準ずるのが普通だ)。結果、実需と雇用の間にバッファーが生じることになる。

 

更に、JALについては特殊事情がある。同社の場合は1970年代に需要変動に応じて新卒採用をゼロにした年があったが、これによる社員の世代的バラツキが後々社内組織や採用・育成計画に悪影響を与えた。こうした問題に直面する企業は今も多くあるが、JALではひと足早く人材をコンスタントに雇い入れる必要性を認識したと言える。ここ数年の間、50歳前後の中間管理職世代の人員削減や賃金一律5%カットなど厳しいリストラを進めてきたことも相まって、そう簡単にプラスアルファのlay-offや賃金カットを打ち出せる状況にはない。

 

とすれば、航空会社はコスト削減努力の大なる部分を雇用コストの削減に求めることができない。そこでロードファクターやユニットレベニューを上昇させることを考える。財布の紐を締めるだけでなく、入ってくる金自体を増やそうという発想だ。ここからはマーケティング的な努力が求められるが、国内航空はブランド戦略やサービス品質に取り立てて挙げられる強みがない。着陸料、燃油税と言った公租公課の高さが原価を押し上げていることも問題だ。何か問題が起こるたびに、官から民まで業界全体の構造改革の必要性を強く感じざるを得ない。

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偏狭なナショナリズムは打破すべき

2009/01/23 00:49

 

かんぽの宿」問題で記事を書いた折にはこのブログにも多くのアクセスをいただき、私自身も関心を持ったので他を見に行ったりもした。そのうちある所ではコメントも付けていたが、途中で馬鹿馬鹿しくなって止めてしまった。

 

そこでは、「竹中はニヤニヤして嫌い」「宮内氏は出自が朝鮮の可能性がある」などと一歩間違えば誹謗・中傷になりかねない話を"論拠"に「かんぽの宿」問題で鳩山擁護の"論陣"を張っていた。その次の記事では宿の物件の売却先が「外資や朝鮮なら許せない」とまで書いてあった。尤も、そのブログの筆者の名誉のために言えば、彼はそれらの"論拠"を彼なりに信じるに足るソースから孫引きしていて、主張するに足るものと思って書いているのだろう。だが、率直に言ってこうして端から物事を狭い視野でしか見られない人間は社会・経済的な議論に参加すべきではない。 

 

私の政治的な立場は「保守」である。右か左かと言えば右寄りかもしれない。遠戚に戦犯がおり、靖国神社にも参っている。だが、こうした立場は差別主義とは違う。私は「朝鮮人」に偏見はないし、彼らが朝鮮人であるからと言って攻撃することもない。加えて言えば、朝鮮人自身、自分が朝鮮人になることを選べたわけではない。だから、差別主義的な言葉を平然と文字にするような人間に保守・右派を名乗ってほしくない。そんなものはネオナチと大差ない。正直、一緒にされたくない。

 

経済的な立場としては、私は自由主義者である。「新自由主義」と言われるとすんなり頷けるわけではないが、ハイエクの主張は理解できるし市場メカニズムは人類史上最も素晴らしい発明だと思っている。そうした立場から言えば、経済は経済学をもとに論じられるべきで、感情論をもとに論じてほしくない。基礎的な経済学の知識もない人間が経済政策を論じるべきではないし、かんぽの宿が問題とされているおかしさも理解できまい。おかしいと思うならマクロ経済学の基礎の本あたりから買ってきて経済学を勉強したらどうか。

 

純粋に経済学を踏まえてこの国の経済のあり方を考えられる人間なら、「朝鮮」だろうが「外資」だろうが、対日投資はただありがたいものであるということは容易に理解できる。安全保障上の問題がない限りにおいて、土地であろうが企業の株式であろうが日本を買ってもらうことは歓迎すべきなのだ。日本は日本だけで生きているわけではない。ましてや貿易立国として海外にモノを売って"外国人の巾着袋"から稼いでいる国だ。このグローバリズムの時代に「外資はダメ」と言っている人間は、この国が今後どうやって生き残っていくのかというビジョンも考えもないことを自ら暴露している。

 

今日は抽象的な文なので具体論には踏み込まずに終わるが、今後はことある毎にこのブログでも日本のあるべき経済政策を仔細に渡って記していきたい。

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職権濫用大臣は辞任が相当

2009/01/19 14:58

 

年50億円の赤字を垂れ流し、2012年までには廃止ないし売却しなければならないことが決まっている「かんぽの宿」だが、2度の一般競争入札を経てオリックスに一括売却されることになった。これについて鳩山邦夫・総務大臣が横槍を入れているのは周知の通りだが、率直に言って彼は「頭が悪い」としか言いようがない。

 

鳩山大臣はこの問題について「なぜ今なのか、なぜ一括(売却)なのか、なぜオリックスなのかが3大クエスチョンマーク」だと述べている。が、本業でもないのに年50億円も赤字を垂れ流し、しかも法律で廃止・売却が強制されている施設の売却を急がない経営判断などありうるのか。"お荷物"事業を一括で、しかも一般競争入札で最高値を提示した会社に売却することの何が「クエスチョンマーク」なのか、私たちの方がクエスチョンマークである。仮に私が日本郵政の社長でも、間違いなく同じように売却を推進するだろう(正気の経営者なら皆そうするはずだ)。上場企業ならそれをしないような経営者は株主代表訴訟の対象にさえなりうる。

 

この問題は鳩山大臣の制度への無知と経営感覚のなさを暴露していると言える。一般競争入札は希望すれば誰もが参加できる最も公平な入札制度であり、恣意的な操作や意図は入りようがない。だから「李下に冠」などと怒ってみせる意味もわからない。それとも「鳩山利権」として指名競争入札か随意契約で販売するつもりだろうか。怪しい怪しいと言っている側が実は一番怪しいのではないか。

 

加えて言えば、鳩山大臣は地域資本への分割売却を主張しているが、それがどれほど現実性のある話か自身で検証したのだろうか。非常に疑問である。かんぽの宿全国津々浦々、黒字の施設から大赤字の施設まで全てひっくるめて年50億円の赤字を垂れ流す事業である。つまり、分割したうえで期限までに売却しようとすれば黒字の価値ある施設は適正価格以下で買い叩かれ、赤字の施設は買い手さえつかないことになる。黒字の施設も入った一括売却だからこそプレミアムがつき、その結果が109億円なのだ。つまり、総額が一括売却以上になることなど絶対にありえない。「簿価が落札価格の10倍以上」などと言う向きもあるが、これも如何にも素人の議論だ(年50億も赤字を垂れ流すような事業は本来なら無価値以下であり、プラスの値段が付くだけありがたい)。1年間持つだけで50億円も損をする事業を109億円もらって一括で処分できるという話は、本来諸手を挙げて歓迎すべきことではないか。

 

これを鳩山大臣のせいで向こう1年間売却できなかったとすれば、来年は159億円以上で売却しなければ割に合わないことになる。しかも膨大な施設を1つ1つ分割して地元資本を探して売却する作業は1年では終わらない可能性さえある。が、売却時期が更に延びれば損失は更に増えるのだ。仮に鳩山大臣が言うように「地元資本」に売却し、その合計額が159億円+α以上にならなければ鳩山大臣は責任を取って日本郵政とその株式を持つ国に対して差額を弁済すべきだ。不要な事業を抱えたまま上場しても株価上昇は覚束ないから、訳の分からない職権濫用の結果最後に損をするのは国民である。

 

更に馬鹿馬鹿しいのは、この不勉強な職権濫用大臣に対して民主党が「迎合」していることである。枝野議員は鳩山発言を「良識ある発言」と述べたが、これほど馬鹿馬鹿しく不合理な職権濫用が「良識」ならば一体何が良識なのかわからない。枝野議員は製造業派遣の再規制にも意欲を見せている大衆迎合の「常習犯」とも言える。国の事業のバランスシートを意図的に悪化させてまで人気取りに走るような議員を次の選挙で当選させてよいものかどうか、国民一人一人が真剣に考えるべきだ。

 

一部では、鳩山大臣をそそのかしているのが元郵政「造反組」の山口俊一・首相補佐官であるとも指摘されている。事実だとすれば総理も取り巻きも悉く腐った酷い内閣だが、既得権者がグルになって国民の資産を毀損するような動きは絶対に許されない。

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わかりやすい風刺、単純な議論

2009/01/18 21:54

 

 

 

あるところで紹介していた「派遣切り問題」の風刺漫画である。非常に分かりやすく、本質を突いていると感じた(詳しくは先日の記事に書いている)。

 

今朝のサンデープロジェクトは全編討論の構成で、とりわけ中盤の竹中平蔵、金子勝・両慶大教授の討論は面白かった。見ていない方のためにひと言で解説すれば、金子勝氏の負けっぷりが見所だった。

 

話は日米の株価の下落率から始まった。サブプライムローン問題の震源地・アメリカよりも日本の方が株価は下げているがなぜか、との問いに竹中氏は「サブプライムの問題以前から日本の株は下げ始めている。これは構造改革路線の停滞によるものだ」と指摘。これに対し、金子氏は「為替レートの変動をかぶせれば・・・」などと的を外した指摘。

 

当然田原総一郎氏は竹中説を軸に話を展開させ、話題は金融再生プログラムと構造改革の是非論に。金融再生プログラム(竹中プラン)とは、竹中氏が小泉政権下において2002年から開始した不良債権処理を軸とする金融機能再生のための政策群である。これについて問われた金子氏は「私は90年代から公的資金の強制注入を主張し・・・」などと自身の功績を語り始める。「竹中さんは反対していた」とおまけまで付けて事実関係を否定される一幕も。竹中氏は政治家の抵抗やメディア、評論家のバッシングを受けながらもプログラムをまとめ、実行した経緯を説明し、その結果株価が底を打ったことを説明する。終いには金子氏が「(竹中氏の)金融再生プログラムを評価する」との言質まで取られて終了。

 

その後は90年代から派遣社員が増加傾向にあった(だが正社員は減っていないから雇用全体は増えている)こと、派遣法の改正による製造業派遣の解禁が小泉政権下で行われたこと、それは偽装請負への批判など当時の世論を背景に行われたこと、などの事実を軸に議論が展開されるが、ここでの議論はほぼ既知の範囲で新味はなかった。私もここで主張したように、竹中氏をはじめスタジオのコメンテーター、ゲスト(金子氏以外)の総意は「同一労働・同一賃金原則の確立(このことは経済界、労組ともに反対したため小泉政権下で実現しなかった)」。金子氏は批判ばかり目につくが具体策、代替策の提案がなく鼻につく。

 

その他の話題(新産業の創出、法人税減税、規制緩和など)も取り上げられていたが、終始金子氏が一方的に追い込まれる展開だったと感じた。具体策を語る竹中氏に対して抽象論で批判する金子氏、という構図が印象に残った。

 

実は似たような組み合わせは新年早々NHKでも見ることができた。こちらは正確な日付を記憶していないが、「構造改革派」として竹中氏のほかICUの八代尚宏教授、外交評論家の岡本行夫氏、自称パワフルウーマンの勝間和代氏、「反構造改革派」として金子氏、北大の山口二郎氏、ジャーナリストの斉藤貴男氏らが参加していた。2時間近くやっていたようなので始終見ていたわけではないが、今回と同じく金子一派が一方的に批判し、竹中派が具体策を語り続ける展開だった。

 

経済学的には金子氏らのようなマルクス経済学の一派は死滅している。少なくとも世界ではそのはずだが、日本ではまだ彼らのような人間が本も書けるしテレビにも出られる。このことは率直に言って不思議で仕方がない。金子氏は竹中氏について「今世界で新自由主義的政策を主張しているのはブッシュ、マケインそれに竹中さんくらい」と言っていたが、言葉を返せば今世界で「所得再分配」などとマルクス経済学をぶっているのはカストロとチャベス、それに金子氏くらいではないか。それはともかく、世論の大勢として「短期的な需要創出のためにケインズ的政策(財政出動)が必要」という意見は大いに結構だが、それ以上に語られるべきなのは産業構造と労働市場の改革ではないのだろうか。

 

ここ30年、日本を引っ張ってきたのは輸出産業・製造業だった(それもずっと自動車のままだ)。一方アメリカは製造業、金融、ITと常に先端産業が入れ替わっている(それが失敗したと言う向きもあるだろうが、残念ながら日本はそれ以上に失敗し続けている)。イギリスも製造業から金融へとシフトし、ドイツも製造業のなかで自動車から精密機械、環境分野へとシフトしている。これら他の先進国が絶えず産業構造を変革しているのに対し、日本はフランスしてしまって進歩がない。別に日本が金融立国を目指す道理はないが、国全体がこれからも製造業(「ものづくり」と言えば聞こえはいいが)一本で飯を食っていこうとするのは「人と接するのが苦手だから」などと言って他業種を忌避し続ける元製造業の派遣切り労働者と同じかそれ以上にレベルが低い。

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新聞記者が情報弱者に

2009/01/12 07:52

 

今朝の日本経済新聞6面(中国・アジア面)「アジア国境問題 進展模索の機運」記事中段にこんな記述があった。

 

「市民団体の反政府運動がサマック前首相を辞任に追い込んだ後で発足し「低下したタイの信頼回復」を命題に掲げるアピシット政権は―」

 

言うまでもなく、サマック氏は「前首相」ではない。タイの前首相はソムチャイ氏(代行も含めればチャワラット氏)であり、サマック氏はその前の「元首相」に当たる。 更に正確を期すならば、ソムチャイ前首相にしてもサマック元首相にしても「市民団体の反政府運動」によって辞任に追い込まれたというのは間違っている。サマック氏の場合はテレビ番組に出演してギャランティを受け取ったことが違憲とされ辞任、ソムチャイ氏の場合は裁判所による国民の力党(人民の力党)の解党命令により失職しているためだ。つまり、市民運動は首相を追い込んだ直接的要因ではなかった。

 

新聞記者自身が見事な情報弱者ぶりを発揮したのも驚きだが、こんなミスを見逃したまま掲載させてしまったデスクも可笑しい。先日書いた記事が空しい限りだ。

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航空機受注も真冬の嵐

2009/01/10 09:27

 

 

以前、「来年(09年)の航空業界は修羅場だ」と書いた。IATAが2009年の全世界の航空会社の総収入予測を前年比7%減と発表したことによる。この時はキャリアサイドから考察したが、今度は航空機を製造するマニュファクチャラーサイドから簡単に考察してみたい。

 

ボーイングは昨年の納入実績でエアバスに対して再び敗北を喫した。エアバスの納入実績はまだ昨年11月時点までしか明らかになっていないが、この時点でボーイングの12月までの納入実績を上回っていることが分かっている。そして今年早速、民間商用機部門での4500人人員削減を発表した。ボーイングの昨年の受注は、既に不況を先取りして前年比53%減の662機まで減っている。取り分け低燃費機として鳴り物入りで大量受注を集めた787の納期遅れが響いているが、今年はそのうえを行く厳しさだ。

 

世界のキャリアの総収入が前年比7%も減るということは、キャリアとすればそれ以上に輸送力を引き締めることになる。原油価格の高騰がひとまず落ち着いたことで、低燃費の新型機を焦って買う環境にはない。また、金融システムの破綻で機材購入に必要なファイナンスも難しくなったから、機材のダウンサイジングのために新しい小型機を買うインセンティブもない。つまり、輸送力を減らすために手っ取り早いのは現有機材の削減と発注残(バックログ)のキャンセルなのだ。

 

現にANAは、新大型機の目玉として導入を決めかけていたエアバスA380の導入を白紙撤回した。シンガポール線など既に海外キャリアがA380を導入した路線での競合対応が眼目にあったが、それ以上に全体の需要が低下しているだけに現有機を超える大型機の導入は難しい。2010年の羽田・成田再拡張を控えて機材全体のダウンサイジングは止められないため787の発注をキャンセルするということは考えられないが、今更新型機、それも超大型機を導入する理由は全くない。

 

また、JALは輸送力を削減するためボーイング747型機の2階部分を閉鎖するなどして座席数を抑えることを検討している(これは奇手だ)。2階部分を閉鎖すれば、そこ(の非常口部)にCAを配置する必要がない。機材自体が変わるわけではないから着陸料や燃油コストは大して変わらないが、人件費などの運航コストを需要減に合わせて減らすことで収益的にはマシになる。

 

こうした環境下においては、キャリアが吐き出した余剰機材や既に生産済みながらキャンセルされた「新古機」がリース市場に溢れ出すことになる。機材のリース費相場は急落するだろうし、それを追い風にした新規参入のローフェア・キャリアが急成長する可能性もある(まさに不況産業である)。いずれにせよ、マニュファクチャラーにとって良いことは年内には何もない。

 

細かく計算したわけではないことをご承知おきいただきたいが、大雑把に推算すれば今年のボーイング、エアバスの受注は両社ともに200~300機強程度に留まるのではないか。これは同時多発テロ後の2002年と同等の水準だ。あるいはバックログのキャンセルが増えれば、100機台も十分あり得る。特に、後継機種の開発が進んでいるボーイング747とエアバスA330、ETOPS対応双発機に駆逐されているA340の受注は惨憺たるものになるだろう。まさに凄まじい冬の大嵐が吹き荒れそうだが、は1年経っても来ないかもしれない。

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[経済政策]民主党はなぜ信頼されないか

2009/01/10 00:09

 

派遣再規制の議論を見ていて鼻につくのは、野党とりわけ民主党の浮世離れぶりだ。私は総選挙に向けて民主党の某候補の陣営を手伝っているから(民主党自体を応援あるいは支持しているわけではない)、なおの事気になる。

 

ある経済学者のブログで、数式を使った説明がなされていた。

何のことはない「派遣を禁止しても正社員には半分も戻らない」「逆に失業者が大量発生する」ことを解き明かしたものだ。そんなものは数式で説明するまでもなく分かる話だが、民主党の諸氏はそこまでの気づきがないらしい。野党が足並みを揃えることを優先し、最初は渋っていた製造業派遣禁止の法案提出に同調するという。とすれば実際は気づいているが無視しているのかもしれないが、そうであれば政治家として、という以前に人間として倫理が問われるのではないか。

 

それは大量の失業者を出してでも大衆に媚を売り、政権盗りを優先することになるからだ。ある所ではフランスの事例も引かれていたが、フランスでも衆愚的な労働者側からの要求に屈した結果失業率が上がっている。同じことを日本で繰り返そうというのは学習能力のなさを露見しているに等しく、とても信頼して政権を任せられるものではない。

 

今、政権政党になる可能性が高まっている民主党に求められるのは、現実的な政策の提案と議論である。

 

雇用問題における根本的な問題は以下の2つに集約される。

①同一労働"不"同一賃金(正社員と派遣社員の格差)

ノンワーキングリッチの存在(終身雇用・年功序列の残滓)

 

民主党は①については関心を示しているが、②に関してはほぼ黙殺に近い。支持母体に連合など正社員労組の巨大組織を抱えるからだろう。しかし、現実問題として「派遣を禁止しても正社員が増えない」理由は、正社員の労働コストが不当に高いからだ。真に派遣社員が正社員と同等の賃金・待遇で働けるような法整備があれば「派遣切り」などというものはここまで社会問題化しない。しかし、一方でそれを実現するためにはあまりに高すぎる日本の正社員の労働コストを引き下げなければならない(労働分配率は、とツッコミかかった方は気が早い、もう少し読み進めてほしい)。年を食えば食うほど金も食う、といった年功序列・終身雇用制度はその最たる元凶なのだ。

 

会社経営という視点から見れば、日本は経営者や株主に対してあまり報いてこなかった。だが、このところの「株主資本主義」と呼ばれるトレンドのなかで、株主に対する配分は妥当な水準まで上がってきた。ここで気の早い人間は「次は労働分配率を・・・」と思うのだろうが、日本の労働分配率は国際比較でも高い方だ。問題は、労働に分配された分が本当に公平に労働者に渡っているのかどうかである。

 

成果主義をことさら推奨する気はないが、働かないで高報酬を得ているノンワーキングリッチが働いても稼げないワーキングプアを産んでいるという現状を打開する方法は、終身雇用制を全廃する社会的大改革しかない。

 

それ以上に必要なのが、成長戦略である。民主党にはこれが決定的に足りない。

 

限られたパイをどう分配するか、という議論は利害が絡むため永遠に解決しない。今のこの流れでは、派遣を規制すれば正社員の残業が問題となり、正社員の残業を規制すれば企業の競争力が落ち、企業の競争力が落ちれば更に所得や消費に悪影響が及ぶという悪循環に飲まれかねない。結果必要なのは、パイ全体をどう増やすかという成長戦略しかないのだ。

 

そのために必要なのは、30年以上も製造業一本に頼ってきた日本の産業構造の根本的転換と、そのための大胆な構造改革・規制緩和である。財政支出は短期のマクロ的指標を操作するだけの効果しかない。それどころか潰れるべき企業を潰さず、新産業への人的流動も抑制してしまうという非常にまずい逆効果を産む。この点、いわゆる「上げ潮派」の言っていることは極めて正論に近いわけだが、民主党にはそうしたことを語る政治家が皆無である。この点を考えれば、はっきり言って、民主党候補を応援している私でも自民党の方がまだしもベターな選択だと思わざるを得ない。もちろん私から身近な民主党候補に一言申し上げるわけだが、現職でもない新人候補だから小沢氏の頭の固さを嘆くくらいしか出来ないだろう。国民が馬鹿だからこうなる、と言っては言いすぎだろうか。

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